ベトナムのCOVID-19対応の成功(翻訳)~「早期検査・隔離」の徹底による対策とベトナムの伝統医学・西洋医学・中医学をいかした医療背景

(2020年7月27日作成記事:
翻訳記事の原文は同年6月30日付け)

※この記事では団体「Our World in Data」のウェブサイトから記事を翻訳していますが、
本ブログは同団体のすべてのスタンスに賛同するわけではありません。

はじめに

新型コロナウィルスに関してベトナムの対応は大変早かったという。

感染者数も7月3日時点で355人と低い
(ベトナム大使館ウェブサイト)。

少し前に、
Our World in Data※に掲載された研究記事が、
新型コロナウィルス対応の模範例として、
ベトナムを取り上げていた。

※国際問題のデータ・研究をインターネット発信する英非営利団体

以前にも、
韓国、イタリア、イギリス、米国について書かれた記事を個人的に翻訳し、
ブログに掲載したが※2、
この記事についても、
自分の学びと今後の暮らし向きについて考えるために翻訳した。

ベトナムの対応の迅速さ・確実さ。

・決断の早さ
・情報の一元化や政府運営の十分な隔離施設など対応の迅速さを支えるシステム
・社会全体を巻き込む対策
・市民との意思疎通を図る不断の努力
等々

ここまでの対応ができるのかと、驚いた。

ベトナムは一党支配の国であり、
SARSや、鳥インフルエンザの人への感染のなども経験しているという。

そうしたことからこのような迅速な対応が可能になったのではないかと、
記事の中で推察されている。

ベトナム以外の国でも取り入れることが可能なことについても言及されている。

個人利用のための翻訳であるが、
関心のある方がいらしたらお読みいただければと思う。
(十分な確認をしたつもりであるが、
誤訳等がないことを保証するものではないことはご了承願いたい。)

翻訳記事の後に、
伝統医学を取り入れたベトナムの医療について、
研究者小田なら氏の論文を参考にさせていただき、
ご紹介する。

ベトナムでは医療に、
南薬(ベトナム独自の医薬)、北薬(中国由来の医薬)、西薬(西洋医学由来の医薬)
の3つが取り入れられているという。

ベトナムで、
新型コロナウィルスの予防・治療に伝統医学がもちいられているかは不明であるが、
世界的な模範例として取り上げられる国の背景事情として取り上げておきたい。

※2:「早期検査、時機に遅れた検査:COVID-19検査に対する4か国のアプローチの比較」
以下記事で翻訳掲載:
自分を偽らずに仕事をする~Our World in Data の記事を訳しながら考えたこと:
翻訳含む(PCR検査について4か国のアプローチ比較)

Emerging COVID-19 success story: Vietnam’s commitment to containment~新型コロナウィルス(COVID-19)対応にあらわれた成功:封じ込めへのベトナムの尽力

Emerging COVID-19 success story: Vietnam's commitment to containment
Vietnam is one country which has responded well to the Coronavirus pandemic. How did they do so? In-country experts prov...

この記事は、

Todd Pollack (i), Guy Thwaites (ii), Maia Rabaa (ii), Marc Choisy (ii), Rogier van Doorn (ii), Duong Huy Luong (iiia), Dang Quang Tan (iiib), Tran Dai Quang (iiib), Phung Cong Dinh (iv), Ngu Duy Nghia (v), Tran Anh Tu (v), La Ngoc Quang (vi), Nguyen Cong Khanh (v), Dang Duc Anh (v), Tran Nhu Duong (v), Sang Minh Le (vii), Thai Pham Quang (v)からの寄稿記事である(「Exemplars in Global Health platform」のプラットフォーム掲載記事)。

(ⅰ)~(ⅶ)の記号について:

(ⅰ)The Partnership for Health Advancement(仮称:ベトナム健康推進パートナーシップ)(ⅱ)オックスフォード大学臨床研究ユニット
(ⅲ)ベトナム保健省
(ⅳ)ベトナム科学・技術省
(ⅴ)ベトナム国立衛生疫学研究所
(ⅵ)ベトナム国家大学ハノイ校公衆衛生大学
(ⅶ)世界銀行ベトナム事務所

2020年6月30日

本記事は、コロナウィルスのパンデミック対応において模範例がどこにあるのかを突き止め、その理解をすることに焦点をあてたシリーズのひとつである。この記事はExemplars in Global Health (EGH)のプラットフォームに掲載されている。

EGHでは、Gates Venturesとビル&メリンダ・ゲイツ財団が支援する世界中の専門家、資金提供者、協力者が提携し、世界的な健康問題における成功例を厳密に理解することは資源分配や政策決定・実施判断を改善するのに役立つという考えを共有している。EGH は、世界中の政策決定者がどのようにすれば健康・人的資本についての深刻な問題を解決できるか、迅速に学べるよう支援するために創設された。

再利用自由

はじめに

ベトナムでは2020年1月23日に新型コロナウィルスの初めてのケースが報告されたが、その後4か月以上に渡り、報告されたケースは300を若干超える程度で死亡例は0であった。この早期の成功はいくつかの重要な要素にもとづいており、その中には非常に発達した公衆衛生システムや強力な中央政府、さらに包括的な検査・追跡調査・隔離にもとづく積極的な封じ込め政策がある。ベトナムの早期発見・封じ込め対策の成功から導き出せる教訓は、その詳細を検討するに値する。そうすることで、その他の国々が自国の対策に取り入れることができるだろう。

感染者の発見
ベトナムは検査に的を絞ったアプローチを採用し、地域内感染伝播がみられた地域において大規模な検査を行い、各陽性例について接触者追跡を3段階にわけて行った。

封じ込め
この感染例発見の一連のプロセスの結果、海外からの旅行者や検査で陽性と判定された人との濃厚接触者など数十万人が政府運営の隔離センターに収容された。それにより家庭内および地域レベル双方で感染が大幅に減少した。地域感染が明らかになったホットスポットはただちにロックダウンされ、政府は市民と頻繁に意思疎通を図り、市民に情報を伝え続けて公衆衛生対応に市民もかかわり続けるようにした。
ベトナムがそれだけ迅速に行動できた理由のひとつとして、ベトナムは2003年にSARSを、2004年から2010年の間には鳥インフルエンザの人への感染を経験したことがある。このことから、ベトナムには適切な行動をとれる経験と基盤の両方が備わっている。新型コロナウィルスのパンデミックが拡大しつづける中で、ベトナムは多くの規制を緩和しており、症状のレベルがどのように変化するか、また、なぜ変化するのかを研究することが特に重要となるだろう。

背景

 国の概要

ほぼ1億人の人口を抱えるベトナムでは、1980年代から重要な経済変革が実施されている。1980年代半ばにドイモイと呼ばれる経済改革を導入したことで中央計画経済は社会主義志向の市場経済へと変わり、ベトナムを現在の中所得の地位へと導くことになった。

ベトナムは医療制度に多額の資金を投入してきており、1人あたりの公的医療費は2000年から2016年にかけて1年あたり平均で9.0%増加している。こうした資金投入によって健康指標は急速に改善し、成果を上げている。1990年から2015年の間に、平均余命は71歳から75歳に延び、乳児死亡率は、1990年の生児出生1000人当たりの死亡数36.9人から2018年には16.5人まで減少した。妊産婦死亡率は生児出生10万人当たり139人から、54人へと急激に減少した。2018年の12~23か月の小児における麻疹予防接種率は、97%以上である。

ベトナムはパンデミックを上手く制圧した過去がある。ベトナムは2003年にWHOがはじめてSARS制圧を認めた国だ。SARS流行の間にベトナムが先駆けて取り入れた介入※は新型コロナウィルスに関しても使われている。SARS制圧の過去とならび、流行への備えや対応措置に経験のあることが、ベトナムの人たちが政府の公衆衛生対応に従おうという気持ちを高めた可能性がある。事実、世論調査企業により5月後半に行われた調査では、ベトナムの62%の人々が、政府の対応レベルは「適正量」であったと考えており、調査が行われたその他45か国のどの国よりも評価が高かった。

[※介入について:疾病と因果関係があると考えられる要因に積極的に介入して、新しい治療法や予防法を試し、従来の治療法・予防法を行うグループと比較して、その有効性を検証する研究手法。治験と違い、承認済みの医薬品・医療機器を用いる。コトバンクから引用]

SARSの流行を受けてベトナムでは、国の公衆衛生危機管理センターや公衆衛生調査システムの創出など、公衆衛生基盤への資金投入を増やした。ベトナムでは国家危機管理センターが2013年に設立され、2016年には4つの地域支部を設置された。

危機管理センターには経験豊富な人材が配置され、その中にはベトナム保健省の予防医療部門が運営する、実地疫学専門家養成コースプログラムの卒業生もいる。このプログラムはアメリカ疾病管理予防センターとWHOが支援しており、「現場での『病気の探偵』を養成する」3つのカリキュラムから成る。2019年5月の段階で、ベトナムには23人の卒業生がいる。危機管理センターのこのネットワークは、政府の利害関係者がアウトブレイクに備えられるように訓練や演習を行う。また、麻疹、エボラウィルス、中東呼吸器症候群(MERS)、ジカウィルスに関しての備えや対応に取り組んでいる。

ベトナムは公衆衛生団体からデータを収集して統合する堅固なシステムを長期にわたって維持管理しており、2009年にはほぼリアルタイムのウェブベースシステムに移行した。2016年からは、届け出義務のある疾病を24時間内に中央データベースに報告するよう病院は義務付けられ、ベトナム保健省が国内の疫学的推移をリアルタイムで追跡できるよう確実にした。2016年に、ベトナムはアメリカ疾病管理予防センターと提携して「事象ベース」の調査プログラムを試験的に導入。良好な結果を得たことで、2018年には国全体に規模を拡大した。事象ベースの調査では、教師、薬剤師、宗教指導者、地域指導者、さらには伝統医学の治療者などの一般人に、公衆衛生にかかわる事象を報告する法的権限を与えた。その目的は、アウトブレイク出現を示唆する可能性がある、同じ症状をもつ人たちのクラスターを突き止めることである。ベトナムが感染症流行の備えと対応に重点を置いているもう一つの表れに、ベトナムは2014年に世界健康安全保障アジェンダに参加した最初の国々の1つということがある。世界健康安全保障アジェンダは、感染症の脅威の予防・発見・対応において世界規模での努力の強化に従事する67の国の集まりである。

アウトブレイクのタイムライン

ベトナムの新型コロナウィルスの最初のケースは2020年1月23日に報告された。患者は中国の武漢から入国した男性と、ベトナムに居住するその男性の息子だった。3番目の患者はベトナム市民として初めてのケースで、商用で武漢に旅行し2020年1月17日に帰国した25歳の女性である。最初のケースが確認されて1週間後、ベトナムでは「政府全体」での戦略をまとめるために国家対策委員会が創設された。当初2日おきに会合が開かれている。ハノイから車で1時間ほど北にあるビンフック省では、省の指導者達がソンロイと呼ばれる生活共同体をロックダウンした。また、感染者と感染者の濃厚接触者を少なくとも14日間隔離センターに隔離し、地域内感染伝播が最初に確認された時点で地域全体の検査を開始した。第2波のケースが発見されたのは3月6日である。これらはヨーロッパ、イギリス、アメリカなどの新しいホットスポットからの輸入例だった。第2波の初めてのケースが発見された次の日までに、政府はその濃厚接触者、同じ通りに居住する者、その感染者とロンドンから同じフライトに乗り合わせた者、あわせて200名を追跡調査し、隔離した。

新型コロナウィルスの毎日の確定例数

アウトブレイク100日目に入る5月1日において、徹底的な検査にもかかわらずベトナムが確定した症例は270にとどまり、4月15日からは地域内感染伝播もまったく起こらなかった。現在までベトナムでは新型コロナウィルスによる死亡者は出ていない。この感染症と死亡事例についてさらに理解を深めることが必要だが、一部の専門家によれば以下の点がベトナムの新型コロナウィルスについての良好な結果に貢献しているという。ベトナムの肥満率は極端に低く、これが若年者人口の多さ(ベトナムの平均年齢は30.5歳、65歳以上の人口は全体のたった6.9%、新型コロナウィルス感染者の平均年齢は29歳)と結びついたというのだ。さらに、ベトナムのケースの大半(5月25日現在で67%)は新型コロナウィルスで影響を受けた国々(最初に中国、その後ヨーロッパとアメリカ)からの輸入例だった。

 

年齢および性別によるベトナムの感染例

ベトナムの輸入例vs地域内感染伝播例

発見

 検査

1月後半に、ベトナム科学・技術省はウィルス学者を同席させた会合を開いて診断検査の開発を奨励した。2020年2月初めに始まり、公的資金を受けた機関が、ベトナム国内の地域で生産された少なくとも4つの新型コロナウィルス検査を開発。国防部とベトナム国立衛生疫学研究所により認証された。その後、ベトアー(Viet A)社 や Thai Duong社などの民間企業が検査キット製造のための生産ライン提供を申し出た。これらの検査が分析される政府承認の研究所の大半では、WHOのプロトコルの研究所内版が使用され、検査が長時間待つことなく広範に実施できるようになっている。気道検体の分子診断(例:ポリメラーゼ連鎖反応またはPCR)が主に使用されている。宿主の抗体を検出する迅速な診断検査は、ほとんど用いられていない。

診断検査キットの開発タイムラインは以下の通り:

・2020年2月7日

ハノイ工科大学が検査キットを開発。

検査方法:RT-LAMP (reverse transcription loop-mediated isothermal amplification)。

費用:15ドル(米ドル)。

検査時間:70分

・2020年3月3日

ベトナム科学技術アカデミーが検査キットを開発。

検査方法:リアルタイムRT-PCR (逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)

費用:21ドル(米ドル)。

検査時間:検体受領から80分

・2020年3月5日

ベトナム軍医大学が開発、ベトアー(Viet A)社が商品化。

費用:19~25ドル。

検査方法:RT-PCRおよびリアルタイムRT-PCR。

検査時間:1時間以上(2段階のベルリン医科大学プロトコルよりも早い)だが、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の検査キットと比較して4倍の検査能力がある。このベトアー(Viet A)社の検査はEUやその他の国々で承認されており、現在では他国へ輸出されている。ただし、WHOは2020年5月の時点でまだ認証していない。

・2020年4月28日

Thai Duong 社が商品化したRT-LAMP法のキットとRT-PCRのキットの製造販売開始。

検査能力も急速に増加しており、1月後半はベトナム国内でたった2か所だったのが、5月までに120か所に広がった。5月の時点で、63か所で検査が確定できた(送付された検査を分析するという意味)。送付された検体数が少なかったため、ベトナムでは検査をクラスターの突き止めと感染伝播の拡がりを予防するために活用することに決定した。地域内感染伝播が明らかになると(たとえ1例であっても)、政府は接触者追跡・生活共同体レベルでのロックダウン・地域での広範な検査を行って迅速に対応し、1つの感染例も見逃さないよう確実にした。このことがわかると、ベトナムにおける1人当たりの検査数が比較的少なくても、1確定例当たりの検査は世界中のどの国よりも多く(群を抜いて)行われているとことが理解しやすくなる。

1確定例あたりの検査総数(2020年5月9日時点)

封じ込め

 接触者追跡

検査は接触者追跡の道具として使われる。接触者追跡と隔離は封じ込めの鍵となる要素である。ベトナムの接触者追跡戦略は、独特の広範さで際だっている。それは、F0(感染者)からF1(F0との濃厚接触者、または感染が疑われる者)、F2(F1との濃厚接触者)、F5まで続く接触程度による追跡に基づく。
接触者が感染力をもつ前に追跡・隔離をする機会は非常に少ない。ウィルスとの接触から症状発症までの潜伏期間は平均で5日。感染力を帯びるのは症状を発症する2日前からである。したがって、感染者との接触時点から、接触者が感染力を帯びる前に見つけて隔離するまでの間はたったの3日間しかない。迅速に動き、接触者追跡組織を動員して接触者を探し出すことが重要である。
ベトナムの接触者追跡のプロセスは以下のように行われた。

新型コロナウィルスの患者が一度発見されると(F0)、地域の防疫官が、医療従事者や警備員、軍隊、その他の公務員の協力を得ながら、患者と協力して過去14日間に接触があり、感染したかもしれない人物を突き止める。

・すべての濃厚接触者(F1:新型コロナウィルス確定例のおよそ2メートル内にいた者、または30分以上長く接触した者)がこの接触者追跡の手順によって見つけ出され、ウィルス感染の検査がなされる。

・F1のウィルス検査が陽性と判定された場合、F1は病院で隔離される。ベトナムでは、すべてのCOVID-19の患者が症状にかかわらず無料で入院する。

・F1の検査で陽性判定が出なかった場合、政府運営の隔離センターに14日間隔離される。

・濃厚接触者と確定された者の濃厚接触者(F2)は、14日間自宅で自主隔離が義務付けられている。

ベトナムのアプロ―チで特筆すべき点は、症状を発症したかどうかにかかわらず、自国で定めた疫学的感染リスク(確定例との接触があったか、または新型コロナウィルスに影響を受ける国に旅行したか)に基づいて疑いのあるケースを突き止めて隔離したことである。症状を一度も発症しなかったケース(43%)の高い割合は、ベトナムのこのアプローチが早期に地域内感染伝播をおさえる主要な要因になっていることを示唆している。

ベトナムにおける3段階の接触者追跡

F0:初発症例。医療機関での隔離・治療
F1:感染患者と濃厚接触した者。隔離制度による隔離
F2:F1として隔離される者と濃厚接触した者。自宅隔離

SARSについては症状発症後でなければ感染しなかったために、症状のある人を見つけ出して隔離する戦略が功を奏した。それに対してSARS-CoV-2[COVID-19の原因ウィルス]は、症状の発症前、または症状が出ない場合であっても感染力を帯びることがあり、このような戦略は適切ではないと解される。

1月23日から5月1日まで、20万人を超える人が隔離施設で時を過ごした。政府が運営する隔離センターに滞在する人たちには1日3食、睡眠設備、必要最低限のトイレタリー製品が支給される。この隔離センターの環境について、ソーシャルメディア上の反応はおおむね良好である。人気はないが「オンデマンド」の隔離施設も指定ホテルに設置され、有料でも構わないという人対象に提供されている。

5月10日、ベトナム保健省は通信会社と共同して、市民が「近隣見張りシステム」に参加するのを支援するアプリの「NCOVI」の配信を開始した。一部プライバシー擁護者からは非難の声が上がったが、「近隣見張りシステム」は接触者追跡の公的取り組みを補完しており、新型コロナウィルスの感染スピードを抑えるのにも役立ったかもしれない。NCOVIを用いれば、発見されたケースや感染者のクラスターの地図も見ることができ、ユーザーが自分の健康状態を申告したり、疑いのあるケースを報告したり、隔離下におかれた人たちの動きをリアルタイムで監視することができる。4月15日、このアプリは、ベトナムのiOS app storeで無料ダウンロードできる健康とフィットネスアプリの中で、第4位のダウンロード率となった。4月半ばには、ベトナムのサイバーセキュリティ企業のBkavが、ブルートゥース使用可能なモバイルアプリの「Bluezone」を発売。このアプリは、ユーザーが14日以内に確定例の2メートル範囲内にいた場合、通知してくれる。ユーザーが通知を受けると、ただちに防疫官に連絡をとるよう勧められる。

医療現場における感染予防対策 

医療従事者への感染伝播とその後に起こる地域への感染伝播を防ぐのは、もう一つの重要な封じ込め対策である。2003年から2004年におけるSARSのアウトブレイク中、多数のベトナム人の医療従事者が感染した。初発症例をのぞいて、ベトナムにおけるSARSの死亡者はすべて医師または看護師である。だがこの10年間の間にベトナムでは組織体制への資金投入、物的設備の構築、機器の購入、さらには医療従事者の訓練がおこなわれて、院内感染対策は相当に改善している。

新型コロナウィルスのパンデミックへの備えとして、ベトナムでは医療現場での感染予防の院内処置をさらに強化した。2020年2月19日、ベトナム保健省は国の「(仮訳)COVID-19急性呼吸器疾患の医療機関における感染予防対策のガイドライン」を発行。このガイドラインは、以下の内容について病院への包括的なガイドになっており、家族や見舞客への予防ガイドも掲載されている。ガイドの内容として、確定症例または感染が疑われるケースのスクリーニング・入院・隔離、院内における隔離エリアの設置、個人防護具の使用、環境表面の清掃・消毒、廃棄物管理、患者検体の収集・保管・梱包・輸送、研究所を発生源とする新型コロナウィルス感染の予防、確定症例または感染が疑われるケースの遺体の扱いが記載されている。

ベトナムの新型コロナウィルスの患者のほとんどはハノイ市やホーチミン市の専門病院に入院したが、大きなアウトブレイクが起こった際に救急体制の混乱を避けるため、あらゆるレベルの医療機関で受け入れ準備がなされていた。ベトナムでは病院が満床になる程の感染数は出ていないが、現在までに感染した医療従事者は4人にすぎないことは付記するに値するだろう。

地域を特定したロックダウン

ベトナムでは、時間をかけて疫学的エビデンスを発展させ(表参照)、それに基づき高リスクエリアと疑われる地域に大規模な隔離対策を実施した。

ベトナムでは、4月1日から国全体でロックダウンに入った。当初、ロックダウンは15日間に設定されていたが、63の市・省のうち28の市・省で21日間に延期された。

ベトナム:新型コロナウィルスにおける地域を特定したロックダウン

地域 期間 影響を受けた人口 詳細
ソンロイ村

(ビンフック省): Son Loi Commune (Vinh Phuc Province)

2月13日~3月4日 1万人 当時、ベトナム国内で16の感染ケースがあったうちの6つがソンロイ村でのケースだった。
チュクバック(ハノイ市): Truc Bac Street (Hanoi) 3月6日~20日 190人 患者番号17(第2波で初めての確定例)が当通りに居住。66戸がロックダウンされた。
ファンティエット
(ビントゥアン省): Phan Thiet Streets (Binh Thuan)
3月13日~4月3日 150人 患者番号38が居住する2つの通り(ホアンヴァントゥーとンゴシレン)、29戸がロックダウン。
バンラムにおける3つの村(フゥォックナン村、トゥアンアム県、ニンテオゥアン省): Van Lam 3 Village (Phuoc Nam Commune, Thuan Nam District, Ninh Thuan Province) 3月17日~4月14日 5,000人 2つの確定例(患者番号61および67)が出たため、本地域全体がロックダウン。すべての住民に移動制限が実施され、村の16の入り口はすべて閉鎖され監視された。
トゥアンロイ村(ベンチェ省): Thua Loi Village (Ben Tre Province) 3月23日~4月20日 1,600人 17歳の居住者(患者番号123)が新型コロナウィルスに感染した後、480戸に隔離対策が実施。
バックマイ病院(ハノイ市):Bach Mai Hospital (Hanoi) 3月28日~4月11日 4千~5千人 病院に関係する45人がコロナウィルスに陽性と判定された後ロックダウン。病院関係者15,000人以上が検査され、ロックダウン前に病院と接触のあった4万人以上の人に対して接触者追跡がなされた。
ハロイ村(メリン県、ハノイ市): Ha Loi Village (Me Linh District, Hanoi Province) 4月7日~5月6日 1万人 地域で見つかった感染の最後のケース(ハザン省の患者番号268をのぞく)で、ロックダウン中立ち入り禁止にされた。
ドンヴァン県(ハザン省)

:Dong Van District (Ha Giang Province)

4月22日~23日 7,600人 感染が疑われるケースの検査結果がわかる前にロックダウンが実施され、検査が陰性とわかった次の日に解除された。どれだけ当局が迅速に対応できるかの良い例となった。

ベトナムで隔離された全人数

 

大規模集会、旅行・移動制限

武漢での初めてのケースが確定される前であっても、ベトナムでは、閉鎖や市民・海外旅行者の移動制限を実施するために必要な多くのステップの第一段階に着手がされていた。ベトナム以外のほとんどの国では、こうした類の決断は感染者数がかなり多くなるまで行われなかった。

武漢からの入国旅客は、ベトナムにおける初めてのケースが出る前に追加のスクリーニングを受けていた。中国の旅行客者用のビザの発給は1月30日から止められた。初めてのケースが確定されてからたった1週間しか経っていなかった。

10日間の春節の終わりである1月31日には(この時点でベトナム国内の確定例数は5つにすぎない)、ベトナム政府は国内のすべての学校を閉鎖するように命じた。

中国からのフライトは2月1日から運航が停止され、その後間を置かずに2月5日には列車の運行が停止された。これらの規制は確定例数が1桁台の時点で行われた。

シェンゲン加盟国と英国からのフライトの運行は3月15日(第2波のケース発見後。ヨーロッパに旅行していた人たちの追跡調査がなされた)に停止され、3月18日にはすべてのビザの発行が停止された。3月22日までにはベトナムの国境は閉鎖され、すべての国際フライトが運航停止された。

ベトナムでは2月の初め、新型コロナウィルスに影響を受ける国々からの海外渡航者を、政府運営の大規模な隔離施設に14日間滞在させる措置を開始した。また、ベトナムでは2月4日から、中国から帰国するベトナム人に対してもこの隔離施設に滞在させる措置を開始し、3月1日には韓国からの帰国者に対して措置を拡大。最終的に3月20日から22日まで海外からのすべての入国者に措置を適用した。国際フライトは、国内旅行に使用される空港とは別の空港へと到着先が変更された。

明確で一貫したクリエイティブな公衆衛生メッセージの発信 

多くの国のリーダーが新型コロナウィルスの危険性を過小評価する中で、ベトナム政府は、初めてのケースが報告される前であってもその危険性について明確で強い言葉をもって発信した。1月9日、ベトナム保健省は初めて市民に新型コロナウィルスの危険性について警告した。それ以降、ベトナム政府は頻繁に市民と意思疎通を図った。ベトナム国内の電話通信すべてに短い予防対策のメッセージを流すようにし、市民に直接テキストメッセージを送って、ベトナムにおけるソーシャルメディアの高い利用率(ベトナムでフェイスブックを実際に使用するユーザーは6400万人。ベトナムにおけるスマートフォンユーザーの80%がローカルソーシャルメディアのアプリケーション「Zalo」をインストールしている)を活用した。

2月後半、国立労働・環境衛生研究所 (National Institute of Occupational Safety and Health) は「Ghen Co Vy(「コロナにシェラシー」の意味」)をリリースした。人気のポップソングに新しい歌詞をつけ、手洗いの公共広告にした。同研究所はKhac Hung氏に替え歌の作詞を依頼し、ダンザーのQuang Dang氏に踊りの振り付けを依頼。最終的にはTik Tokのダンスチャレンジで最も視聴される動画になった。3月にはベトナム保健省は国内すべての携帯電話使用者にSMSで10のメッセージを送信。こうした意思疎通の中で、ベトナム政府はつねにこの標語を使用してきた。「流行との戦いは、敵と戦うようなもの」。この標語を発信することで共同体意識が生まれ、すべての市民が公共の場でマスクをつけるにせよ、何週間にも及ぶ隔離を我慢するにせよ、自分の役割を果たさなければと感じた。

4月14日には、ソーシャルメディア上で「不正確な情報、虚偽の情報、事実をねじまげた情報、または誹謗中傷を共有」するためにソーシャルメディアを利用した人に、ベトナム当局が罰金を科すことができるという命令が発令された。この命令はアムネスティ・インターナショナルやその他の方面からの反対の声を招いた。一方で、[英市場調査会社の] YouGov(ユーガブ)のデータによれば、5月4日時点で、93%のベトナム人が政府の対応を「大変良い」または「やや良い」と考えているという。

結論

ベトナムの新型コロナウィルス対応は、ある面において他国では再現できないかもしれない。過去の感染症の流行の経験が、ベトナム市民に新型コロナウィルスの拡大スピードを緩めるのに重要な一つひとつの行動をさせた。ベトナムは、国レベルから村のレベルまで上意下達の一党支配の国という特徴があるため、資源の結集や公衆衛生戦略の実施、規制を厳密に実施する中で一貫したメッセージを確実に発信するのにとりわけ適している。

だが、ベトナムから学べる多くの教訓は他の国々でも採用できる。例として、

  • 公衆衛生基盤へ投資(例:危機管理センターや公衆衛生調査システム)すれば、ある国が公衆衛生の危機を上手くコントロールするのに幸先良いスタートがきれるようになる。ベトナムはSARSや鳥インフルエンザの経験から学んだ。他国も新型コロナウィルスから同様の教訓を学ぶことができる。
  • 国境閉鎖から検査、ロックダウンにいたる早期対策で、手がつけられなくなる前に地域感染を抑制することができる。
  • 徹底的な追跡調査で、特定地域の封じ込め対策が功を奏するのに役立つ。
  • 症状のみに基づくよりも、ウィルスとの接触可能性に基づく隔離で、無症状や発症前の感染者からの伝播を減らすことができる。
  • 明確なメッセージの発信が勝敗を決める。明確で一貫した、真剣な語りかけは危機を通じて重要である。
  • 強力な「社会全体で」のアプローチをすることで、多様な分野の利害関係者を政策決定プロセスに巻き込み、適切な措置の実施に団結力をもって関わってもらうことができる。

ベトナムでは4月22日に国レベルのロックダウンを解除した。学校は5月4日から同月11日の間まで開かれた。公共交通や、国内フライト、タクシーは現在運行可能とされているが、国際フライトはまだ停止中である。
公共の場ではすべての人がマスクを着用しなければならない。

ベトナムでは4月16日以降、地域流行にかかわる新型コロナウィルスの新規症例は報告されていない。だが、さらに多くのベトナム市民が帰国しており、54の陽性ケースが空港と隔離センターで見つかっている。
ベトナムにおける新型コロナウィルスをめぐるこの新たなフェーズは、今後も注視することが重要になる。
大きな論点は以下の2つだ。
「いつ、どのようにベトナムは国境閉鎖を解除するのか」。
「いつ解除すれば封じ込めの成功を維持することができるのか」。

表:ベトナム~アウトブレイクと政策措置のタイムライン
※表はOurWorldDataのウェブサイトへ

本記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0国際)の元に提供:
All of Our World in Data is completely open access and all work is licensed under the Creative Commons BY license.

ベトナムの現状(ベトナム大使館情報)

7月27日にベトナム大使館ウェブサイト()で以下を確認した。

感染者数:355件(7月3日時点:ベトナム保健省発表等による) 

死亡者数:0(同)

入国制限:3月22日からすべての外国人の入国を停止中

学校も開かれている。

なお、7月25日に,
ベトナム中部ダナン市において,計2名の新たな新型コロナウイルス感染者が確認されており、
その対応情報が同大使館ウェブサイトに掲載されている。

情報収集・提供の迅速さ、
また、社会全体で取り組む姿勢、
経済活動が柔軟に行われていることがうかがえる。

関心のある方は同大使館のウェブサイトをご覧いただければと思う。
ベトナム国内における新型コロナウイルス関連発表(ダナン市での新たな感染者の発生)

ベトナムの医薬~南薬(ベトナム独自の医薬)・北薬(中国由来の医薬)・西薬(西洋薬)

少し前に漢方の記事を読んだ際※、
中国・韓国・台湾では新型コロナウィルスの予防・治療に伝統医学も利用されていると読んだ。
(日本の伝統医学である漢方も、これらの国の伝統医学同様、古代中国の医学にルーツを発している。)

特に韓国・台湾は新型コロナウィルス対策の評価が高いと聞く。

ベトナムも新型コロナウィルスの感染者数自体が大変低い(355名:7月3日時点 ちなみに死亡者は0)。

地理的にも中国に近く、
ベトナムの医学も古代中国の医学の影響を何か受けているのではないか。
そのこととベトナムの新型コロナウィルス対策に何か関係はあるのだろうか。
そう思ってインターネットを調べてみたところ、
小田なら氏のベトナム医療の歴史をめぐる論文に出会った。

※別記事において触れている。
関心のある方がいらしたらご覧になっていただければと思う。
●「東洋医学(日本の伝統医学)とコロナウィルス(COVID-19):新たな時代にむけた産業・経済のあり方への可能性」(こちら

公的医療では南薬・北薬・西薬の3つが含まれる

論文を読みわかったのは、ベトナムの医療では、

・ベトナム独自の医薬(南薬)
・中国由来の医薬(北薬)
・西洋医薬(西薬)

の3つが併存していることだ。

公的医療制度では、
西洋医薬のみならず、ベトナム独自の医薬、中国由来の医薬もカバーされているという。

このような制度になったのは、
ベトナムが歴史上中国の支配をうけ、その後フランスの植民地になり、
さらにはインドシナ戦争・ベトナム戦争を通して、
中国や西洋との対立軸で自国の医学も発展させてきたことと、
長い戦争の時代に財・物が不足して身の周りの薬草を使う必要に迫られたことが大きいようだ。

以下、小田氏の論文を参考にさせていただき、ベトナムの医療の歴史を以下に簡単にまとめる。

ベトナムの医療の歴史

古代~14世紀ころまで

中国の諸王朝の支配を受けつづけていたベトナムは、医学においても中国から大きな影響を受けていた。

14世紀ごろ~

中国医学に対してベトナム独自の医学が発達しはじめる。

19世紀

フランス植民地となる(フランス・ベトナム戦争1858~1862)
フランス植民地政府は西洋医薬を使用する医療をもちい、西洋医学のみを公的に教育。

インドシナ戦争・ベトナム戦争

(第二次世界大戦時には日本の占領下にも入っている。)

インドシナ戦争(1946~1954)後、
ベトナムは南北に分断される。

北ベトナムでは、ベトナムの伝統医学が推進されたという。

アメリカの経済援助を受けた南ベトナムでは西洋医学に比重が置かれたという。

しばらくしてベトナム戦争が起こる。

(なお、ベトナム戦争開戦・終戦時についてはともに諸説あり。
なお、米空軍が北ベトナム爆撃を開始したのは1965年。サイゴン陥落は1975年。)

インドシナ戦争・ベトナム戦争時には、
物、資金が不足する中で北薬(中国由来の薬)の入手も困難化した。
身の回りの薬草の利用を余儀なくされる。

結果としてベトナム独自の薬草の研究・実用性の裏付けがすすんだ。

この当時の状況について小田氏の論文から引用する。

インドシナ戦争にも参戦し,現代ベトナムにおいて伝統医学の基礎研究の第一人者となったロイは,この当時,西洋近代教育制度下で医・薬学教育を受けた者らがジャングル周辺の薬草に関する在来の知識を吸収,あるいは老人からの経験知識を共有しようとしていたと記している…。…この時期は西洋医薬のみならず中国からの薬剤も入手…が困難な状況であった。…北薬を専門に利用していた著名な漢方医,ドー・フォン・トゥアン(Ðô ̃ Phong Thuâ`n)も,「われわれは認識を改め,われわれの庭や森にある植物について記憶を辿り,それらを使った」と回想している…

(引用:小田なら氏「ベトナム近現代史における「伝統医学」131~132頁」

いかにベトナムの伝統医学が成立し,なぜ発展してきたのか」という問いには,外敵を想定したナショナリズム論や,政治目的のための「伝統の創造」論のみでは答えられない.財・物の不足により,身近な薬草に頼らざるを得なかった抗仏・抗米戦争期や1980年代の物資不足の時代に,それらを利用し,実用性を裏付けられたからこそ現在まで残るものとなったのである.

(引用:小田なら氏「ベトナム近現代史における「伝統医学」:第111回 日本医史学会総会 一般演題 

南北統一後

それまでの北ベトナムにおける方針にもとづいて医療制度が整備された。

・南部にも伝統医学を利用する民族医薬学院の設立
・各県の病院「伝統医学」を専門とする部門等の設置義務
・医師免許制度の整備など

なお、小田氏はその後の論文において、
伝統医学の制度化と実態との乖離について触れている。

・伝統医学を制度化することの難しさ
・人々は必ずしも制度化された「伝統医学」のみを利用するわけではないこと等

(小田なら氏「ベトナム「伝統医学」の形成過程-医療の「制度化」と実践のあいだ-( Abstract_要旨 )」:京都大学 ⇒

なお、制度化することの難しさは、
画一化しきれないというベトナム伝統医学の特質にも理由があるようだ。

南北統一前の北ベトナムにおける伝統医学

南北統一後に採用された、
北ベトナムの伝統医学における方針とはどのようなものだったのか。
以下に述べる。

北ベトナムでは、
ホー・チ・ミン氏が保健省幹部に送った手紙がきっかけとなり、
政府が伝統医学を推進することになったという。

「医学は,科学的・民族的・大衆的であるという原則…に基づくべきである。われわれの祖先は,われわれの薬と北薬による治療についての素晴らしい経験を豊富に持っている。幅の広い医学を開くために,各自は東洋医薬と西洋医薬の研究とそれらを融合することを重視しなければならない。 (1955年2月27日  付 保  健省幹部会議宛)…」※

ホー・チ・ミン氏は、
少数民族の治療師にもらった薬草により長引く自身の発熱が治癒したという体験をしており、
その体験からこの手紙を送ったといわれる。

その後北ベトナムの憲法には、
「人民の健康の改善と発展は,伝統医薬と現代薬学の結合の基礎の上にある」※
と定められた。

また、
「保健省は全国で南薬の使用と研究を指導するよう指示をするとともに,保健省に東洋医学局を置き,伝統医学関連の通達などはここから出すようになった」※
そうである。

(各※は、以下論文から引用させていただいた:
小田なら氏「ベトナム近現代史における「伝統医学」132~133頁 

まとめ

新型コロナウィルス対策に成功している国々では、
徹底的な検査が行われていることが明らかになっている。

一方、日本は新型コロナウィルス対策において、
検査の段階で相当な遅れをとっている。

世界的に経済も停滞していく流れにあることを考えると、
戦争期のベトナムではないが、
足元にある活用できるものはすべて活用していくという姿勢が必要になるかもしれない。

日本にも伝統医学の知的資源があり、
長く利用されてきた民間薬の知恵もある。

感染という点からどのように活用するのかを判断しながら、
これらを含めて研究に取り組む必要が出てくるかもしれない。

その際にはベトナムの例が参考になるのではないか。

(また、中国の例になるが、
新型コロナウィルスへの伝統医学の活用について以下の記事があったのでご紹介させていただく。

中医学の治療が施される臨時伝統医療施設について:
「患者が太極拳や八段錦と呼ばれる体操や呼吸法を行うよう計画し、回復を促進したり、気分転換をしたり、回復できるという自信を強めてもらったりしている。また、鍼灸やマッサージなどの中医学の物理療法も取り入れている。」
~中国工程院の張伯礼院士、新型コロナウイルスに対する中医薬の有効性語る 2020.2.24~28 

真摯に探し求めるなら、
自らの足元にも必要とする知恵は眠っている。

ベトナムの例に、
このような教えを私は感じた。

ここに、翻訳および参考にさせていただいた論文記事の執筆にかかわった、
研究者をはじめとするすべての方々にお礼を申し上げる。
以上
(2020.7.27)

関連記事:

■翻訳記事(イベルメクチンについて):インド弁護士会がWHO主任科学研究員対して送付した法的通知書(

■東洋医学(日本の伝統医学)とコロナウィルス(COVID-19):新たな時代にむけた産業・経済のあり方への可能性

■人類を感染症から救ってきた土壌放線菌:世界各地でCOVID-19への臨床治験・研究がすすむイベルメクチン(既存薬:北里大学大村智博士開発)の有用性について(記事)

■自分を偽らずに仕事をする~Our World in Data の記事を訳しながら考えたこと:翻訳含む(PCR検査について4か国のアプローチ比較)
※翻訳記事:「Testing early, testing late: four countries’ approaches to COVID-19 testing compared」(早期検査、時機に遅れた検査:COVID-19検査に対する4か国のアプローチの比較)

■「幸せの自転車」パリでは自転車がニューノーマルに~WHOの技術的ガイダンス(徒歩と自転車の優先)を受け、世界各地につくられる自転車用レーン【リサージェンス翻訳記事紹介】(記事)

■コロナウィルス流行拡大でアメリカでは種子販売額が増加~マザーアースニューズ日本版2020 年8月/9月号その1【翻訳記事紹介】(記事)