何気なく飲んでいた梅肉エキスで驚いたこと~日清戦争や第二次世界大戦の時コレラや疫病などにも使われていた:赤本「家庭に於ける実際的看護の秘訣」(初版大正14年)

健康

こんにちは! わさびなです。

少し前にニンニクのしょうゆ漬けの記事を書きましたが、
それで思い出した梅肉エキス。

小さい頃、家に母が作った梅エキスが常備してありました。
お腹の風邪やお腹の具合がよくない時によく飲まされました。

スプーンの柄の先にほんのちょっとつけたものをなめる
のですが、本当に酸っぱくて、急いで湯冷ましを飲んだ
ことをよく覚えています。

それを飲めば具合がよくなって、今でもお腹の具合がよくない
ときはすぐに思い出すのは梅肉エキスです。

大人になってから、お腹の具合だけでなく、風邪の時にも
梅肉エキスを飲んでいるとか、体調維持に飲んでいるという話を
きいて、いろんな使い方ができるんだなあと思いました。

今日はそんな梅肉エキス、私も作っているのでその作り方や、梅エキス
誕生の元である「赤本(「家庭に於ける実際的看護の秘訣」:
初版大正14年)」についても触れてみます♪

梅肉エキスの作り方

季節をちょっと(どころかかなり(^_^;))先取りなんですが、
簡単にご紹介です。

冒頭の写真にあるものは、青梅 1キログラム位を使いました。

これを

①セラミックのおろし器ですり、
②すったものをさらしでこし、
③こした汁を土鍋でゆっくり黒くネバリ気がでるまで煮詰める

これで出来上がりです。
ビンに入れて、保存します。
常温で数年は保存できます。

 

残ったかすは梅ジャムにしました。

子供の頃手伝った時はもっと多くの青梅を使い、
青梅をすりこぎで叩いて種と実をわけ、
実をジューサーに入れて汁をとっていました。

梅肉エキスの由来:「家庭に於ける実際的看護の秘訣」(著者:築田多吉)

梅肉エキスを思い出して、そういえば…あの本にのってるかも、
と頭に浮かんだのが、母から借りていた赤い本。
「赤本」としてよく呼ばれる、「家庭に於ける実際的看護の秘訣」
(著者:築田多吉、三樹園社)という本です。

 

著者は築田多吉氏。本には「元海軍衛生大尉」と書いてあります。
初版は大正14年で、私の手元にあるものは1600版とありました。
(今でも、三樹園社で購入できるそうです)。

 

梅肉エキスについて書いてあるかなと、辞書のように分厚い本を
探してみたところ、なんと!!梅肉エキスは著者築田氏が発表された
ものだったことが分かりました。

漢方や昔から伝わる梅干しや梅酢の効果の文献をもとに研究して
エキスの濃縮に成功し、大正14年の初版の時に発表したそうです。

その後さらに研究を重ね、青梅をすりつぶして絞り、青い汁を
ホウロウ鍋で煮詰める製法を再び発表したと書いてありました。

 

【梅エキスの鑑別法】

赤本には、「真性の梅肉エキスは天然の酸味が強く黒褐色で
ネバリ気が非常に強い」。赤褐色でネバリ気がないものは
混ぜ物が入っているので、効果は梅干とあまり変わらないと
書いてあります。

築田氏の梅肉エキスの経験

大変古い本ですが、
私の目には今読んでも大変有用な情報が書かれているのではないかと思え、
読み継がれてきたことがよく理解できます。
私の母も、祖母から手渡されたようです。

きちんと読んだことがなかったのですが、思い出して手に取ってみて本当に
よかったです。

予防・手当・食養生など、広範囲にわたる内容ですが、
梅肉エキスのことについて書かれた部分から、一部引用させていただきます。

 

●梅肉エキスの経験
(たくさん書かれています。一部のみ引用させていただきます。)

(「猩紅熱全快の実例」から
「付録に書いてあるとおり、
いかなる病気でも熱が出始めた時には何の熱か分からないのであるから、
高熱が出た時はまずひまし油を飲んで、その後30分ごとに梅肉のエキスを飲むと、
早いものは下痢の後2,3時間くらいで急に下熱するものもあり、徐々に下がるのもあり、
一日後から下がりかけるものがある。
ひまし油が間に合わない場合にはまず梅肉エキスを飲ませてひまし油を買いに行けばよい。
疫痢などは十分間を争う場合が多いから梅肉を早く飲ませておけば毒素を消して、
その後でひまし油を飲んでも危険は救われるのである」

「梅肉のエキスの用量」から
大人で1回普通の大豆なら2粒くらい(2グラム)が適量で、
小児はこれに準じて減らせばよい。
…チフスなら5日以内、疫痢は発熱2時間以内に与えて浣腸すると助かる。
体質と潜伏期の関係で下熱せず、効かない場合もある」)

 

 

ニューギニア島や日清戦争時に築田氏が軍医として勤務した際、コレラや赤痢などの
対応に梅肉エキスを使用した経験

 

 

●第2次世界大戦初期、陸軍輸送船全部とその連絡兵站線に梅肉エキスを配給したこと
(築田氏が梅肉エキスで日清戦争時多くのコレラ患者に対応した経験から取り入れられた)

 

 

弘前大学の研究で、梅肉エキスから強力な抗菌物質が発見されたこと
(ペニシリン顔負けとして昭和24年11月「人間医学」発表)

「弘前大学医学部佐藤興氏が同大学細菌学教室山本博士の指導の下、
梅肉のエキスの研究を3年にわたり続け、ついに純粋に近い抗菌性物質の摘出に成功した。
これをチフス菌、赤痢菌、ブドウ状球菌、大腸菌などに使用した結果、赤痢菌は6グラム、
その他の菌は9グラムで死滅すること、動物実験で注射しても毒性はないことが分かった。
発見者の佐藤氏は来る23日、盛岡の岩手医大で開かれる第3回細菌学会東北支部会で
研究の結果を正式に発表する。

(同大学細菌学教室)山本博士談 …今度の発見はペニシリンその他の抗菌性薬剤のように
菌の発育を防ぐのとは異なって菌の発育を阻止する以上に菌其のものを殺すと言ふ強力の点が
注目される。」

 

 

梅肉エキスがそんなに活躍していたとは!!

最後に~「科学療法と体験療法」「療養の本道と裏道」

実のところ、今まで赤本をきちんと読んだことがなく、
今回梅肉エキスについてちらっと調べてみようと思っただけなのですが、
その懇切丁寧さ、科学的方法のみならず病気の予防法、漢方、心の持ち方など
までにいたる内容の幅広さに驚嘆しました。

「項目だけ挙げても約300点。築田はそれらを実際に試し、
効果があると結論付けたものを掲載」(福井新聞2018年3月5日記事)
したそうです。

当時は医者にかかることによる経済的負担が大きく、予防することの
大切さを知らせることにも心をくだかれたのだろうということです
(同新聞記事から福井県立歴史博物館の山形裕之副館長の談)。

 

 

古い本であるため、すべての内容が現在にも通じるかどうかは
私にはわかりません。

でも、赤本全体から「何とかして人の命を救いたい」という誠意が
伝わってくるのは間違いありません。

かつて日本にはこのような人が存在していた。
大きな希望を感じました。

 

巻頭には、少し前の記事でご紹介した「自然・生命・人間」を
書かれた、東邦大学創始者の額田晋氏の兄である額田豊氏も
本書を良書であるとの批評を巻頭に残されています。

自分が病院に行かなければならない時は、こんなお医者さんに
かかりたい。大分前に亡くなられていますが、遅まきながら
赤本を読み、本を通して築田氏に出会えて本当に良かったです。

 

 

最後に、「巻頭警告」および「自序」から一部引用させていただき、
この記事を終わりたいと思います(一部漢字をひらがなにしました)。

 

「『巻頭警告』

科学療法と体験療法

…医者と医学者は別である。無条件に混同してはならない。
先駆し、邁進する一方の科学者の業績を体験から導き出し、
それを洗い磨いて結論を得る知行の合一が併行して進んだところに
本当の医術がある。しかし、この医術も人体を無生物の唯物扱いにして、
個体の恒常性を堅持し、自然良能の力と病人必然の「心の病気」を
無視したところに大きな誤算がある。それで私たちは五官の官能と
実地の体験によって、科学の半面に忘れられた自然良能の抵抗力を
奮い起こし、この力を加えて三つのが協力しないと、どうしても
人間の病気は治りにくいという結論に到達した。

外科手術で内臓を切り開き、これを縫って成形するのが今の医術で、
その縫った傷口が癒着して完全に治るのが自然良能の抵抗力である。
もし抵抗力が弱いと、病菌が入って化膿し、手術は失敗に終わる。
そこで科学は抗菌性薬のペニシリンやストレプトマイシンを発明し、
これで病菌を抑えて手術を順調に導くことに成功した。これは
偉大なる発見であるが、体内にはこのように病菌と抵抗力とが
いつも戦っている。だから、抵抗力の増進こそ保健上にも、病気治療
の上にも最も必要な力である。

…今回は巻頭警告を多く披瀝したが、人々があまりにも科学のみを
偏重し、療病保健に最も大切な自然良能の抵抗療法に耳をかさず、
惜しい命を縮めている。これを見るに忍びないので、体験の
裏付けのある実例を書いた。私の堅い信念である。」

 

「『療養の本道と裏道』

…35年間の病院生活中には原因も療法も不明で泣きながら永く
病床に呻吟している病人が非常に多かった 今の物質本位の
医学ではいかんとも手の打ち様のない、この多くの難病者を
何とかして救済する方法はないものだろうか、かかる差し迫った
環境の中に毎日仕事をして働いている半狂信的な私共はかかる
悲惨な人生は何としても黙視するに忍びない。

…秘密にその病人に漢方や、断食、針灸、等の療法を教えて
自発的に自分でこれを実行させるとまもなくその多くの難病者
が皆全快して続々退院してしまうという救済法を発見した。

…これらの体験が後にこの赤本著述の先駆をなしたのであるが、
かかる事実は職務上では違反行為になるのであるが、
神様と一緒にする仕事には罰はない。その様なことを恐れて
いる様では大きな人助けはできるものでない。医療の本道を
行ってはどうしても治らない病気がこの裏道の東洋医学の
民間療法で行くとわけもなく治るという生きた事実は
科学盲信者や現在苦しんだ病人の頭にはどれ位の反響を
与えるのであろうか。」

 

ここまでお読みくださってありがとうございました。

関連記事:
●自分で自分の健康・命をまもる~読んだら勇気がわいてきた:赤本「家庭に於ける実際的看護の秘訣」(初版大正14年)No.2(こちら

●自分を偽らずに仕事をする~Our World in Data の記事を訳しながら考えたこと:翻訳含む(PCR検査について4か国のアプローチ比較)(こちら
翻訳記事:
「Testing early, testing late: four countries’ approaches to COVID-19 testing compared」
早期検査、時機に遅れた検査:COVID-19検査に対する4か国のアプローチの比較

●東洋医学(日本の伝統医学)とコロナウィルス(COVID-19):新たな時代にむけた産業・経済のあり方への可能性
こちら

ベトナムのCOVID-19対応の成功(翻訳記事)およびベトナムの医療(南薬・北薬・西薬)
(こちら
翻訳記事:
「Emerging COVID-19 success story: Vietnam’s commitment to containment」
新型コロナウィルス(COVID-19)対応にあらわれた成功:封じ込めへのベトナムの尽力


●何気なく飲んでいた梅肉エキスで驚いたこと~日清戦争や第二次世界大戦の時コレラや疫病などにも使われていた:赤本「家庭に於ける実際的看護の秘訣」(初版大正14年)もよんでみました
こちら

●忙しいときだからこそ筆を~自分をリセットして心身を整える・身体感覚をみがく:書道のすすめ
こちら