こんにちは! わさびなです。
今回は絵本「かっぱとてんぐとかみなりどん」のご紹介です。
「かっぱとてんぐとかみなりどん」
著者:かこさとし
出版社:復刊ドットコム
(1978年童心社より刊行された
「かこさとし・むかしばなしの本かっぱとてんぐとかみなりどん」
を底本に復刊)
2018年に92歳で亡くなられたかこさとしさんによる、
とても楽しいとんち話。
読み聞かせなら、5、6才~小学校低学年のお子さんにおすすめです。
そしてこの困難な時期、
大人の方にもぜひおすすめしたい絵本です。
あらすじ
山のふもとに住んでいた炭焼きやのとうべいさん。
ある日、山へ登ります。
すると、
まずはかっぱに、次はてんぐに、最後はかみなりどんに出会いました。
山ではたらく人たちを苦しめていたこの3人。
それぞれとうべいさんに無理難題をふっかけます。
息子のとうへいちゃんのおしりやほっぺたやおへそをよこせと言うのです。
めそめそ甘えん坊のとうへいちゃん。
とうべいさん、困ったことになりました。
とうべいさんは家へもどってとうへいちゃんに事の次第を話します。
そんなのわけないと、とうへいちゃんは山へ登っていくのです。
加古里子(かこさとし)さんについて
1926年生まれ。2018年逝去。
絵本や紙芝居の創作を手がける他、
工学博士、技術士(化学)、児童文化の研究者でもありました。
軍国少年だったというかこさとしさん。
飛行機に乗りたいと思うようになりましたが、
視力が悪かったために断念します。
第2次世界大戦中は軍需工場に動員されました。
戦後、大学を卒業して民間企業に就職。
また、セツルメント(地域住民の生活向上を目的とした社会事業)
の活動もはじめます。
そこで紙芝居をつくって子供たちに見せるようになりました。
仕事の傍ら紙芝居や絵本の創作活動を続けましたが、
仕事に手を抜くことは一切しなかったそうです。
後に多くの部下を抱えるようになりましたが、
その姿勢は変わらなかったといいます。
48歳で退職。
その後は創作活動に力を注ぎ、
生涯で600冊以上の絵本を手がけました。
この本のあとがき
数年前、子供に読み聞かせをしたのがきっかけで出会った一冊です。
とても楽しいとんち話。
とうべいさんやとうへいちゃんが歌う言葉のリズムも軽やかに、
読み聞かせがすすみました。
楽しかったねーー、
とあとがきのページをめくって目を通した時、
本編との差に驚きました。
そして、この絵本が忘れられない一冊になりました。
以下にあとがきの一部をご紹介させていただきたいと思います
(この本のシリーズは、この本を含めて5冊あります)。
このものがたりは昭和30年、子ども会でおこなった<素話>が
もとになっています。…その筋は、…に見られるとんち話、ちえ話の系列
ですけれど、そうした話を、たんに「うまいことをしておもしろいな」で
終わらせたのでは、いちばん大事な点がぬけたように考えます。私たちふつうの人間、庶民は、なんとかその日その日を平穏におくりたい、
家族が無事であればと思って生きているものです。その力もよわく、
小心でささやかな人間が、時に、まなじりをさいて何かをめざし、がんばり、
執念をもつには、それなりの強い理由、立ちあがらずにはおられなかった
怒りや苦しみや呪いといったものが、その裏に必ずあるのだ、
その人の心の中に渦まいていたのだということをぬきにしたのでは、
それは意味のない「うそつき話」や「わらい話」となってしまいます。
この本を読んでくださる方が、もし、いわれのない不当な苦しさをしいられ、
つらさの底におとされた時、どうするか、どう考え、行動しなければならないのかを、
この本でーーこのシリーズの中で問いかけたいと思ってかきました。
楽しいおもしろさに秘めた呪いの話であり、おどろな人間の執念のものがたりです。
なぜ、かこさとしさんは絵本を書き続けたのか。
今、私たちに何ができるのか。
大きなヒントを与えてくださっているように感じます。
お読みくださりありがとうございました。
参考サイト・図書:
●かこさとし公式webサイト(こちら)
●別冊太陽 かこさとし 子どもと遊び、子どもに学ぶ 出版社:平凡社
●未来のだるまちゃんへ 出版社:文藝春秋
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